市川きよあき事務所

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グラフィックデザイン

日記

ゴッホのグルグルが見たいのだ

国立新美術館で開催中の「ゴッホ展」見てきました。無名塾公演の「炎の人」に関わってから、すっかりゴッホ、どっぷりゴッホです。展覧会の感想はと言うと、良かったのは良かったんですが、驚きはしませんでした。期待が大きかった分、いまひとつな印象でした。ゴッホって怖いもの見たさの所があるんです。ゴッホの狂気が手招きしてる世界、常人が理解できない簡単には踏み込めない世界、そこが見たいわけです。テンテンウネウネグルグルがいいんです。その狂気の時代(アルル〜サン=レミ〜オーヴェール)の作品が少なくて、ちょっと肩すかしでした。
2010ゴッホ展カタログ    2005ゴッホ展カタログ
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以前2005年に見たゴッホ展が凄かった印象だったので尚更です。5年前は「夜のカフェテラス」「黄色い家」などの傑作+「糸杉と星の見える道」など、狂気のグルグルに吸い込まれそうになる名作がありました。あまりジッと見ていると、どこかに連れ去られてそうになってしまうほどです。恐ろしいナニカがあって絵の前から動けなくなりました。グルグルはなくても「黄色い家」なんかもどこかパースがちょっとおかしい。そのおかしさが底知れない魅力なんです。それに今回は他の作家の作品も今ひとつでした。ゴーガンの作品もアルル時代ものがないんです。。ゴーガンと暮らした部屋を再現するなら、その時の二人の交流がわかる作品を持って来てほしいですね。浮世絵にしてもゴッホが模写したものと本物の並列でなければあまり意味がありません。
考えて見ればゴッホ没後120年は、世界的にも没後120年。オランダに本部隊がいて各国に小部隊が派遣されていることでしょう。多くを望んではダメですね。それからお借りするのに色んな美術館の作品っを持ってくるってわけにもいかない事もあるかも。
印象派の展覧会としてみてもこないだのオルセーの方が良かったかなぁ。
オルセーカタログ
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同じテーマのものの比較にもってこいのーゴッホ全油彩画集
(印刷の絵の色が良くないのですが、なにしろ全ての絵が載っています。)
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じゃあゴッホ展でどんなんが見たいかというと…例えばルーランの家族を描いた全ての絵画とかジヌー夫人の連作+ゴーガンのジヌー夫人、そして現存するひまわり全てとかって無理なのかしらん。そういうの並べて見てみたいし、それから「オーヴェールの教会」や「カラスのいる風景」なんかの狂気のるつぼ見たいなのもなぁ。やっぱり現地に行かないといかんかな。
無名塾の「炎の人」のポスターに使わさせていただいたひまわりは、新宿の損保ジャパン東郷青児美術館にありますが、これは良いですよ。ポスターの画像は、お借りしたデュープ(コピー)ポジフィルムなので、絵具の立体感はそんなに無いですし、人物(仲代さん)と馴染ませるためにわざと黄と赤が強く出していますが、単体で見たら本物は格別です。ゴッホがひまわりに宿って狂気が手招きしています。
「炎の人」の舞台上にも実際に油絵具やアクリル絵具で描かれた、ゴッホの絵の模写が数点いくつか登場します。模写の多いゴッホの模写というわけです。その中のひとつにバックがエメラルドグリーンっぽい「ひまわり」(ゴッホ全油彩画集野表紙の絵)があり、劇中ゴッホにキャンバスを切り裂かれてしまいます。なのでこの絵だけは、全公演回数分必要になるわけです。これ、初演の頃は切り裂かれる数分を(公演回数分)毎回油絵具で描いていたそうです。しかも油だと乾くと切れなくなるので直前に半乾きの状態のモノを用意していたそうです。すごい事です。つい、絵の制作をなさっているSさんに「印刷ではダメだったんですか?」と聞いたら、
「本物の方が、絵を切り裂くゴッホ役の俳優さんの、ためらいに違いが出てくるんじゃないかしら」という答えでした。愚問でした。 
かの黒澤明が「赤ひげ」の時、ズラーっと並んだ漢方の薬箪笥の全部の引き出しにちゃんと薬を入れたそうです。一度も開けるシーンがないのにです。部屋のこもる匂いが違うからだそうです。 できるできないはあるのでしょうが、そういう気持ちは持っていたいもんですね。
事務所には今回集めたゴッホ関係本でまだ読んでないのがいくつかあるので、まだまだどっぷりゴッホです。
父親が持ってた
小林秀雄の「ゴッホの手紙」 こちらは書簡集(テオ宛)
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