市川きよあき事務所

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グラフィックデザイン

日記

オレンジとグリーンの東海道線

最近人の事故が多い。アベノミクしてないのか、ずっと前からのシワヨセなのか、心配です。ホームの防御柵を作れば作るほど増えている気がしてなりません。
事故といえば思いだすことがあります。たしか高校1年の時でした。高校は実家のある東三河の蒲郡から名古屋まで通っていました。片道2時間かかるんで、朝はなんと6時22分発。始発から2本目です。次は30分後になっちゃうのでとにかくコレに乗るしかない。だから3年間遅刻なし。遠い子ほど遅刻ってしないもんです。で、ちょっと早く行こうと思ったら東京から来ている始発の5時9分大垣行きになっちゃう。この電車は貧乏旅行者がお世話になる有名な夜行でして、東京に出てきてから帰省でけっこう使いました。真夜中に着く静岡駅でワサビ漬けの付いたお弁当が楽しみだったなぁ。通学に戻ります。蒲郡に着く時は5時なのでまだ真っ暗。車内の明かりも落としてあります。その夜行臭むんわり漂う電車に、行李をかついだ行商のおばさんと一緒に乗り込みます。早起きで洗面所で顔を洗ってる人もいますが、たいがいグッスリなんで静かに腰をおろしこちらも仮眠。30分ほどたった刈谷あたりでアナウンスが入ります「ポンポンポンポ〜ン皆さま〜おはようございます〜」と同時に車内が明るくなり、あちこちから伸びした声なんかがきこえきます。早すぎる通学は、きれいな朝焼けとのんびりした旅気分が道連れでなんとも楽しいもんです。
かなり脱線しましたが、脱線ではなく衝突事故のお話。その通学の帰りのこと。土曜日の夕方だったと思いますが車内は通学帰りの東三河の学生でいっぱいでした。オレンジとグリーンの東海道線。
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その日は二両目の四人掛けのボックス席に座っていました。幸田を出て左右とも田んぼの果てしない田園風景の真ん中を走っていて、あと10分もしたら蒲郡へ着く時、急に緊迫したアナウンスが入ったんです。「急停車します!急停車します!」
と、突然言われても人間思考が一瞬止まるだけで何をしたらいいのかわからない。もう一度さらに緊迫したアナウンスが入る「急停車します!」ただならぬ声に身構えた瞬間、ドーンと言う音とともに何かにぶつかった衝撃。後ろ向きに座っていたんで前につんのめる。何がおこったのかわからない中しばらくすると、運悪く1両目に乗ってた先輩が首の後ろを押さえてやってきた。「クビがイテェよ、トラックにぶつかった」こういう場合、ちょっと野次馬で見たくなる。一両目を見ると車両が登り坂になっています。「見てたよ、運転手は逃げたから無事だよ。あ〜クビがイテェよ」
電車が踏切で立ち往生したトラックに乗り上げたんです。ギリギリ間に合わなかったんでキレイに乗っかったのかも。大事故にならなくて良かったです。しばらくすると、なんとなく乗客の物知りによってドアが開けられ、なんとなくみんなゾロゾロ外に出ました。そこから田んぼのあぜ道をひたすら、一列になってひたすら幹線道路まで歩きました。振り返るとトラックに見事に乗り上げた列車が逆光の夕陽に映えてオブジェのよう。今だったら一斉にスマホや携帯で写メしたりしたんでしょうけどね。昭和の乗客はただ記憶の奥底にとどめるだけ。それでアリンコの行列のように果てしないあぜ道を黙々と歩いて、バスを適当に見つけて、適当に家に帰ると、晩ご飯を待ちながら家族が食卓を囲んでテレビのニュースに集中してました。
バラバラバラバラとヘリコプターの音と画像とアナウンサーがなんかしゃべってる。そこから引いた画像になると、オオッ、見覚えのある…ハァ〜ン、ヘリコプター画像だとこんな感じか。
トラックに1両目が垂直にキレイに乗っかった車両です。なんか実体験と別物。それとやはりテレビになるには時間がかかる。あれからどのくらい後の画像だろう?各々が勝手に帰ってしまっていては乗客のケガ人がいたのかどうかも、もはや知るよしもない。先輩のクビは大丈夫なのか…
「オレ、これ乗ってたよ」
「エッ〜!」家族全員が一緒に振り返りました。