ドシン、ドシン!最初は地震かと思ったくらいだ。建物が壊れそうなくらいの…震度4くらいの揺れが来る。事務所は二階なんだが、本棚もMACも揺れる。地震は12時きっかりに終わり、13時ちょうどにまた始まる。事務所の隣家の解体工事が先週から続いているのだ。
昨日の15時頃、ゆるやかにピンポンが鳴った。「ピ〜ンポ〜ン」
チャイムは押し方でかなり違う。
玄関開けると、あわてた感じのヘルメットかぶったアラブ人?
「ミズ、ミズ、ミズ…だしてみて。ミズ、ミズでるか〜どうかぁ〜」
なんだ?
もしやと思って彼を押しのけ、外に出て下を覗く。むむっ。隣との境に水たまりがかなり出来ていて、近くにユンボが首を上げた状態でとまっているじゃないか。むむむっ。
急いで戻って蛇口をひねると…案の定出ない。くっと彼を見上げた。
「ミズ出ない?…出ない…わかった15分…15分…すみません」あとずさりする彼に
「ウエア〜ユ〜ケムフロム〜?」
「はぁ?日本語ダイジョブ」
「どこの国の人?」
「トルコ、トルコ…15分…15分…」そう言うと、彼はあわてて階段を駆け下りていった。
15分経った。出ない
「どのくらいかかるか聞いてくださいよ~トイレ行きたいし~」
事務所のSが言う。で、隣をのぞくと、先ほどの彼はいなくて残されたトルコ人が二人いた。ユンボに乗ってた運転手ともうひとり。トルコ人グループの解体業者なのだ。ユンボがこちらを見上げていたので、「どのくらいかかるの〜?」と聞くと「ダイジョブ、ダイジョブ…すぐすぐ…ダイジョブ」言い方が怪しい…Sにピーコックにでも行ったほうがいいかもと言い、下に降りた。現場に行くと水は増えてはいない。これ以上の浸水はなさそうだ。隣にいたユンボがさかんに「ダイジョブ、ダイジョブ」と言うので「どのくらい?」と聞いたら「5分」と即答。…怪しいな…どこ壊れたの?と聞いたら、水道管の壊れた部品を見せてくれて、その部品を最初に来たリーダーが車でホームセンターに買いに行ったことがわかった。歩いてすぐ近所に大きな金物屋があるよ、ダメ元で壊れた部品持ってそこに行ってみたら?とすすめたけど、ユンボはリーダーより日本語が通じないので一緒に行くことにする。
「いとこいとこ」「買いに行った人?」「そう…いとこいとこ」
リーダーはいとこらしい。いとこもユンボも30代半ばかな。
「どこに住んでるの?」「カワグチ」「みんなで?」「そうそう」
自分の知ってるトルコをとりあえず右上がりでなんとなく言ってみた
「イスタンブール?」
「そ〜う!アニキスゴイねぇ詳しいねぇ」凄くはないし詳しくもないし…アニキじゃないし…
「日本にきてどのくらい?」「ン〜5年…アニキ〜」
「5年でそれかぁ?家族は?」「トルコ」
「日本どう?地震怖くない?」「アンゼ〜ン日本すごくいい」
「安全かなぁ…あっテロとか?」「…そ〜う」
そうこうするうちに金物屋に着いたけどお目当てのものは無かった。
長靴が泥だらけだったのでユンボは遠慮して店に入らなかった。
事務所に戻って、よくて1時間だなと思ってたら10分くらいして水が出るようになった。下のパン屋、寿司屋、美容院の三軒がたまたまお休みだったのが良かった。しばらくして今度はピンポンが気持ちよく鳴り「ミズ出た?」とニコニコしながらユンボが来たので「明日も来るの?」と聞いたら休みだった。トルコ人の会社だから、お昼もきっちりしてるし、労働時間なんかもちゃんとしてるのかも。
パソコンに向かい直し、トルコ人 川口 と検索したらクルド人と出た。彼らが難民なのかはわからないけど異国の土地で働くのは大変だ。家ごと無くなるかどうかに比べたら、水道管なんてダイジョブなんだろうな。