5年くらい前だったかな?事務所のSが持っていて、すごく欲しくなりすぐ買ったのがコレ。河野鷹思初期作品集。素晴らしいです。
ほんとにほんとに素晴らしい。いま持っているすべての画集や作品集の中で一番ですね。どんなに高くても買う本。この作品集は、河野さんが松竹キネマ座に所属していた頃の映画ポスターや広告などが掲載されています。斬新なデザインが社内でも映画監督達にも好評で、自由にのびのびとやれたようです。また、中に載ってるエピソードもとても面白いんです。小津監督の名前を入れ忘れたり…あぁお気持ちわかります。5度くらい体温下がっただろうな〜。
河野鷹思さんの事は、お恥ずかしいかぎりですが、独立する前の会社時代は知りませんでした。その河野さんを知らない時に作品に出会ったのです。(この話は以前も書きましたが…)
20年くらい前です。大勢で越後湯沢にスキーに行った時のこと。みんなで晩ご飯の後、温泉町の商店街をブラブラと散歩してました。そこに、お土産屋さんにまぎれて小さなしょんぼりとした古道具屋さんがあったんです。骨董と古本と昔の雑貨やら絵はがきやらなんやらかんやらゴチャゴチャした店。このゴチャゴチャでほこりっぽい収拾つかない店にこそ掘り出しものがあります。奥に商売っけのないオヤジが退屈そうに座っています。パソコンいじれないタイプかな。4人くらいでお店をのぞいてたんですが、みんなは時間をもてあまして出たそうにしてました。もうちょっと待ってて〜とみんなに声かけて物色してところ、古道具のスキマでに紙の束がつっこまれてました。おっこれは?戦前の映画広告のようです。値段はついてませんがビビっときました。
「これ、おいくらですか?」なんとなくさりげなく聞いてみる。
冷やかしだと思ってたところに不意をつかれてビックリするオヤジ。
怪訝そうな悩んでいる顔。しばし静寂…この間合いが面白い。
あきらかに自分の知らないジャンルを思いがけず聞かれた体です。
「…まとめて1000円で…どう?」「買います」即答「○×△さんが〜」なんやらかんやら言ってましたが、聞かずにすぐ払いました。
広告が8枚くらいありました。状態もいいです。なにやらKOHの印がついてます。帰って調べると。KOHは河野鷹思さんのサイン。初期の作品が4枚もありました。事務所でSに見せるとビックリ。本物をはじめて見たようです。特色三色刷り。シルクかもしれません。
1930年製作、小津安二郎のサイレント映画「お嬢さん」栗島すみ子主演です。田中絹代さんも出演されてます。その時併映された「薩南総動員」、それから1931年の上山草人主演のサイレント映画「愛よ!人類と共にあれ」と、1934年のトーキー映画「日本女性の歌」。どれもタイトルデザインが素晴らしい。
それからそれから、Sのマネして作品集を手に入れて、いまやバイブル。本棚に鎮座してます。
昨日久しぶりにアイデア探しで本を開いて昔のことを思いだしました。