浮世絵にはじめて興味を持ったのは小学生の時。切手です。見返り美人、写楽、このあたりは高い切手の代表格。手が届きませんでした。広重の蒲原も高かったなぁ。せいぜい歌麿のビードロとか…。それから大人になって浮世絵を観るようになりました。ゴッホとかの印象派の展覧会なんかで逆に日本の浮世絵を勉強し、だんだん北斎、広重、歌麿といった有名所じゃない絵師のも観るようになっていきました。なかでも特に気に入ったのが渓斎英泉です。彼の描く下町の娘や遊女は退廃的で、艶があり、顔に感情が見えます。つまりリアルさがあるんです。時代的には英泉は、歌麿より少し後で、北斎の最晩年と同じ時代なので、浮世絵界にも、少しずつ人物にリアルさが求められてきたせいかもしれません。また、英泉は私生活もドラマチック。酒と女を愛して放蕩無頼、花街で女郎屋の経営もやってたようでそれも影響あったのかな。
その彼の代表作のひとつが『今様美人十二景』1822年頃の作品。
これは美人大首絵12枚のシリーズで、描かれた女の性格や表情を「~そう」と副題を記しています。こま絵(上の巻物の囲み)で江戸名所を付き。
この中の1枚を何年か前に入札会で手に入れました。
ほかには
があり、残りは
「おもしろそう」「うわきそう」「しづかそう」
「くがなさそう」「てがありそう」の12個のようです。
ちゃんと確かめたことはないんですが…
上にあるこま絵は、美人絵と関連あるんですかね。よくわかりません。そもそも十二景という名はこの場所からきてると思うんですが、美人のみなさん部屋にいるし…。「でごわそう」には登るのに大変そうな山があったり、「おもしろそう」で隅田川の舟遊びの絵があったり…するから言葉遊びで洒落れてるのかな?…謎です。
まぁ、それにしても今から200年も前の江戸時代に版元と「次はおてんばいいんじゃない」とか「てごわそうもいれましょう。」なんて打ち合わせしてたのか〜なんて考えると楽しいです。
こういうシリーズものって、富嶽三十六とか江戸百とか有名なのは全部知ることはできるんですが、ほとんどは画集にも揃いでは載ってないし、浮世絵展でもシリーズでみられない。『今様美人十二景』をいつか12枚揃えることを目標にしてたのにまだ1枚のみ。貧乏じゃ無理ですわ。