テアトル・エコーの「日本人のへそ」を観てきました。教授役の熊倉さんに圧倒されました。スゴかったです。何がスゴイってしょっぱなからのその台詞量!半端じゃない。出演者の紹介をするシーンなんですが10分くらいしゃべりっぱなし。年齢を言うと失礼ですが熊倉さん83歳ですよ。しかも演出もしてる。それで台詞がとても流暢!テンポが良くって面白くって全く問題ないです。問題って言うことじたい失礼でした!映画版では同じ教授役をなべおさみさんがやってました。その時はなべおさみさんて台詞にキレがあって気持ちいいなって思ってたんですが、熊倉さん負けてない。教授ってことならむしろ雰囲気は勝ってます。
ポスターをやるんで台本をいただいて読んだ時もあまりにもスゴイ量なんで、失礼ながら、録音なのかな?思っちゃったほどなんです。しかもその後続けてソロで歌って踊ってる。1幕終わった時に制作の人に「熊さんスゴいね」って言ったら「今日は本調子じゃないんです」って。恐るべし83歳。
「日本人のへそ」は井上ひさしさんの処女戯曲です。熊倉さんが「ひょっこりひょうたん島」でトラヒゲをやってた時に、作家の井上さんと偶然同じエレベーターに乗り合わせて「芝居を書いてみませんか」と声をかけたのがきっかけだそうです。歌があって楽しいものを頼んだそうです。それから1年半、型破りなスゴイ本があがってきました。当時あまりにも特殊な本だったため上演に反対意見もあったそうですが熊倉さんがどうしても演りたいと押して上演にこぎつけました。「日本人のへそ」というタイトルは熊倉さんの案です。高度成長期のワサワサした時代、貧困、成金、ストリッパー、やくざ、レズ、ホモ、この世界は、まさしく「日本人のへそ」。いいタイトルです。一度聞いたら忘れません。
それから41年後の再演。言葉の洪水、言葉遊びの究極、設定の猥雑さ、ムチャクチャな展開。確かに脚本も芝居も完成度は高くないかも知れませんがガムシャラなエネルギーがつまってます。最近の作家はうまく書き過ぎ、まとまりすぎ。ホントちゃ~んとしていてテレビや映画にすぐなるようなのばっかり。井上作品は演劇だけの世界です。「日本人のへそ」は映画化されてるって言っても、ほとんどお芝居をカメラでとってるだけですからね。若い作家には演劇の自由さ、演劇の宇宙のひろがりをもっともっと言葉で表現してほしいです。
ポスターのイラストは村田篤司に描いていただきました。村田さんは「AIWAYS三丁目の夕日」のポスターなども描かれていてリアルなものも得意な方ですが、こういうラフなタッチも素敵です。熊倉さんのイラストはチラシに使用したものです。「日本人のへそ」は10月4日まで。チケットは完売ですが、毎回抽選で数枚当日券が出るようです。熊倉さんのへそ!ぜひ!