市川きよあき事務所

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グラフィックデザイン

演劇

ホブソンズ・チョイスが出来るまで その1

無名塾公演「ホブソンズ・チョイス」が14日、北九州で幕をあけました。九州、静岡、長野、関東などを中心に7月31日までの長い旅公演のはじまりです。え〜っ。誰もが同じリアクションだろうから、あらかじめ書きました。長いです。とにかく仲代さんはじめ出演者のみなさん体調に気をつけて長丁場のりきってください。長丁場の丁場って博打の丁場のものすんごい長いのかと思ったら、宿場の間の長いことのようです。旅公演が長いのは意味的にもあってるかも…。
無名塾の次回作品が「ホブソンズ・チョイス」というお芝居になったと聞いたのは、2010年の夏くらいでしょうか。それで2010年秋から始まった「炎の人」のパンフに告知を入れました。その後、2011年になって震災があり、東京公演が中止になるという残念な事がありました。4月、原発問題がバタバタしている頃、仲代さんや無名塾の人達と打ち合わせしました。振り返りながらも先へ進むしかないのです。
打ち合わせが決まった時から資料集めにとりかかりました。「ホブソンの婿選び」というデヴィット・リーン監督の映画があることはすぐわかったので、まずアマゾンでDVDを取り寄せ、観ながらざっくりとしたイメージを考えます。19世紀末イギリスの靴屋、そして娘と父親がおこす人情喜劇。ヴィクトリア朝時代ではありますが、庶民の話なので、ヴィクトリア朝の手のこんだゴージャスなデザインではないでしょう。それで今回は靴をモチーフにクラシックな感じにしたいと考え、ノーマン・ロックウェル調なイラスト化する事にしました。ノーマン・ロックウェル自体はアメリカですし、時代的には少し後ですが、手触りのするあったかいものにしたかったのです。打ち合わせの場で、すぐ仲代さんは気に入ってくださりOK。仲代さんは決定が早く、2つの案があったら、迷わず面白い方を選ぶ、とてもセンスの良い方です。
イラストは三丁目の夕日などを手がけている村田篤司さんに頼んだんですが、まず仕上がりとほぼ同じような写真を撮影します。ノーマン・ロックウェルのイラストも撮影した写真をもとに描かれています。モデルや背景、小道具、コスチュームなど入念な準備を行った上で撮影に臨むわけです。5月末に撮影する事になりました。2012年の1月が初日なのでまだ半年以上あります。こういう本番前に撮影するチラシ用の衣裳などは、稽古も始まっていないし、演出プランもないので、ウチと演出部などで衣裳を借りたりして揃えます。俳優も協力してくれます。ヴィッキーの衣裳のコサージュ、チラシだとよくわからないんですがヴィッキー役の樋口さんの手作りなんです。
撮影の準備で困ったのがウィリーのエプロンでした。衣裳を探したんですがいいのが見つかりません。結局、学芸大の靴屋さんに頼んでお古を借りました。「このまま写真でも十分いいですね」の声に耳を塞ぎ、村田さんに託します。途中経過を確認に家に一度おじゃましたりして絵は8月後半に完成しました。

左が写真、撮影して合成しました。そして右がそれを絵におこしたモノ
HOBSON1.jpg   HOBSON2.jpg

その原画を撮影、またバックに布画像を張り込んだり、細かい修正してやっとこさっとこチラシが出来上がったのは9月初旬。やはり時間をかけたモノはかかっているだけの事はあるなぁと思っております。この時点で稽古はもちろん始まってもおらず、東京公演に関して言えば半年近く前にチラシが出来てる事になります。
チラシが出来て稽古が始まると今度はパンフです。構成も考えます。デザインだけじゃなく構成を考えるのも楽しいのです。今回のパンフの中身は、前半がお芝居の内容中心。ヴィクトリア朝の豆知識や旅マップも掲載してます。そして後半が仲代さんの役者生活60周年特集。この写真選びがものすごく大変だったのですが面白かったです。映画、舞台、テレビの数百本の作品の写真の中から、今まで露出の少ないモノを選びました。前半も後半も内容がかなり充実しております。広告なしの48P。かなり満腹、かなりお得感あります。ですが、パンフはこれで終わったわけではありません。その2へ続く…。