市川きよあき事務所

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グラフィックデザイン

演劇

余韻エネルギーを放つお芝居

下北で2日連続芝居を観ました。
本多のカトケン事務所とスズナリのKAKUTAです。
まず、最近話題のKAKUTAを初めて観ましたが面白かったです。パワーがあり本も芝居もちゃんとしてました。ただ何人かで話を分けて書く面白さはわからなかった。どうせ分けるなら場ごとにもっと違う色が観たいですね。主役2人の接点もどこか足りなかったように思えました。やはりひとりで書いた方が面白いのかもしれません。今回は記念公演だったので、次に期待します。
KAKUTAの芝居を見ても感じたし、何度も思うことですが、若い劇団の作品にはもっともっとビックリしたいんです。映画やテレビでは表現できないものを観たい。アングラやわけのわからないモノってことではなく、日常を取り上げていたとしてもできると思うし、そこへ向かって挑戦してほしいです。作品全体が持つ余韻エネルギーの強さなのかな。
その余韻エネルギーがカトケン事務所の「寿歌」にはありました。余韻の波がまだ続いてます。今回「シェルター」との2本立て公演で2本目が「寿歌」だったんですが、途中からなんだかジンワリきました。台詞や芝居にじゃないんです。自分でも知らないうちに内からジンワリきました。なんでしょうね。
以前小田島先生が演劇には富士山型と八ヶ岳型があり、自分は八ヶ岳型のシェイクスピアやチェーホフが好きだとおっしゃってました。どういうことかというと、富士山型はどこから見てもやっぱり富士山で、ある程度完成形が想像できるんだけど、八ヶ岳は見るたんびに形が違って見えるということです。「寿歌」は八ヶ岳。元の姿も誰も見たことがない八ヶ岳。それも、どのルートから登ればいいのか、はたして山そのものがあるのか無いのかわからない、そんなお芝居です。
「寿歌」は1月にシスのも観てます。2つの「寿歌」は全く違ってました。出演者の印象を比べると、堤さんのゲサクにはどこか哀愁があり、お芝居を通して背負っているなにかがありました。加藤さんのゲサクは明るくニュートラル。丁寧に淡々とわかりやすく進むんですが、明るい言葉が積み重なっていくのがかえって心の底に溜まって行く、そんな感じ。橋本さんのヤスオはキリストを思わせるイメージはなく人間的で優しく、小松さんのヤスオは最初からキリストが匂い、人間と交流する中で問題点を探しているように見えました。キョウコはどちらも愛すべき可愛いキョウコでしたが、占部さんのキョウコはドラマチックで強さがありました。占部さんのキョウコはスゴいです。彼女の投げ出すテンションに引きずり込まれます。何度も何度も観たいキョウコでした。
演出はどちらもほんのちょっとやりすぎな部分を感じました。ちょっとやりすぎこそが80年代なのかもしれないので、変わったのは自分なのかもしれません。そしてカトケン版を観ると、やはりシス版のプロローグはいらなかったように思いました。作家はどう感じたのかな? 
さて自分の仕事はどうだったんだろう?シス版の写真はとにかくカッコよかった。カメラマンもよく知ってる人なんですが、ハードルが高かったなぁ。色々反省点も多いですが、このお芝居に関わらせていただいて嬉しかったです。