市川きよあき事務所

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グラフィックデザイン

演劇

スズナリで原点に還る

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下北沢の小劇場のメッカ、スズナリに行ってきました。正式名称は「ザ・スズナリ」。スズナリは、今から31年と半年前の1981年の3月に建てられました。夜観るとまた異様です。下北沢の駅から茶沢通りに出て左へ左へと歩いて行くとポッカリとその異空間は現れます。ネオンが不気味にひかり、観客と酔客が入り交じり、どこが劇場でどこが飲み屋なのかわからないカオスの島。うす汚れた建物を包む古びたネオンや外階段は昔からほとんど変わっていません。コンプレックス、屈折、挫折、ひとりよがり、まさしく演劇の魅力がここにあり、理解できないエネルギーが生まれてきました。原点です。奥様達がおめかしして観る娯楽やカップルがおデートでゆったり観るエンターテインメント、そういう背もたれの確かなゆとり演劇は存在しませんが、暗幕に囲まれた150席ほどのパイプ椅子と長椅子の窮屈な観客席から観るお芝居の楽しさは格別です。
観たのはチラシを作った加藤健一事務所の『シュペリオール・ドーナツ』

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シカゴの寂れたドーナツショップが舞台。移民達が生きぬくシカゴの縮図がそこにありました。面白かったです。スズナリのカトケンさんもぜひ! 客席との距離感のつかみかたが抜群です。小さい声でどこまでも届く技術があればこそですね。それと乗峯さんの装置が素晴らしかった。こういう小さい劇場で隙のない装置に出会うと、それだけで嬉しいです。観ていて実際にこんなお店があればいいのにと思いました。セットという事では、チラシの撮影でお借りしたのもとても良いお店。自由が丘にあるバターフィールドです。スズナリとおなじく30年やってらっしゃるそうです。ダイナー風の雰囲気だけのなんとなく作られたお店はたまにありますが、よく見ると置いてあるモノの年代がバラバラだったりします。ここのは本物、すべてが30年経ってるからごまかしようがない。経年の良さは経年じゃないと出せないですわ。
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しかも、しかもですよ。ドーナツがここの名物。こりゃあ出来過ぎです。パンフレットの表紙はバターフィールドのマスターに揚げてもらった出来立てを撮影しました。おそらく物語で出て来るドーナツも素朴でこんな感じではないでしょうか。
ここからはパンフレットのお話。
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加藤健一事務所のパンフレットはA4の半分。A5を横に使っています。加藤健一事務所のお仕事に関わって1年経ち、4本の作品のパンフレットを作りました。パンフレットの表紙のビジュアルはチラシとは変えますが、内容やイメージが近いものを探して作っています。『滝沢家の内乱』は滝沢家の嫁の着物をイメージして、古い着物の端切れを使いました。『川を越えて、森を抜けて』も布なんですがパソコンで色を変えて2組の老夫婦をイメージ。『シェルター』『寿歌』はやはり地球かと思い、事務所の前で空を見上げて撮影しました。赤い傘はチラシのイラストからとって飛ばしました。表と裏がつながるようにレイアウトしたんですが…広げないですね。パンフレット作りは楽しい仕事です。お芝居の原点をさぐりにスズナリへ!観劇の記念にパンフを!内容も充実してます。1コイン500円はお値打ちですよ。特に特にスズナリは厳しくゆとりがないんでので皆さんお願いします。ゆとりがないから魅力があるんじゃないの〜なんて野暮なこと言わないでね。