虎屋ではありません。洋館です。古きステキな洋館です。大正〜昭和初期の財閥は、絶大な財力を持ち、東京のあちこちに洋館を建てて優雅な暮らしをしていました。家族5人に使用人150人といった夢のような世界です。貧富の差というのは時に悪ととらえがちですが、文化はこうしたセンス良き大金持ちによって育てられてきたとも言えます。その洋館のいくつかがまだ残っていて、見学したり、場所によってはロケ撮影などで借りる事ができます。春先、チェーホフの撮影を洋館で行いたいと考えていくつか回ってきました。
○前田侯爵邸(1929年築) 井の頭線「駒場東大前駅」から徒歩10分くらい。
加賀百万石のお殿様のお屋敷です。明治〜昭和ものの大作ドラマには必ずと言ってもいいほどよく登場する見覚えのある迫力ある玄関です。現在は目黒区が管理していて開館中は誰でも無料で見学できます。内部のデザインは剛のイメージです。暖炉以外に家具がないこともあり容赦ない天井の高さと部屋の広さに圧倒されます。ここのいいのは午前午後の2つの区分しか貸し出しがないこと。午前なら、建物まるまる午前中貸し切りです。しかも安い。ただ建物が休みの火曜日しか貸し出していないので競争率高いです。今回聞いた時は空いてたのですが、カメラマンと一緒にロケハンして戻ってきたら埋まってしまいました。仮抑えできないしキャンセル不可なので空いてたら借りちゃうくらいの覚悟が必要ですね。
○島津公爵邸(1915年築) JR「五反田駅」から徒歩10分くらい。
日本の西洋建築の礎、ジョサイア・コンドルの作品。ちなみに公爵と侯爵では公爵の方が位は上です。そんな講釈は置いといて、ここはなんと、清泉女子大の中にあります。しかも公爵邸内部を現在も教室として使っています。なんて贅沢な生徒たちなんでしょうか?見学するには事前申込みが必要です。ロケハンに行った時、担当の方に洋館萌えな生徒が来たりしませんか?と不真面目な質問をしたところ、中にはいるかもとの事でした。逆にここまでスゴイのに、洋館にまったく興味がなかったら寂しいですね。ここはなんといっても外観が素晴らしいですね。外国にしか見えない。内部は階段なんかは前田邸に比べると優しい雰囲気です。島津家の紋をあしらった、丸に十字のステンドグラスなんかが入口にあったりしてステキです。難点は、実際に使っている建物なので撮影する場所かなり限られるのと、大学の忙しい時も使えません。タイミングとイメージがぴったりの時はぜひ使いたい洋館です。
○古河邸(1917年築) JR「駒込駅」から徒歩12分くらい。
ここもジョサイア・コンドル作品。重厚な黒い石の壁が独特です。ここは申し込みすれば比較的簡単に見学できますが、見学中の撮影は禁止です。見学者は自らの記憶にとどめるのみ。だから借りて撮影する場合だけ内部の画像が見られます。そして、ここが今回の撮影場所。なのに貴重な内部を使わずに外壁をちょこっと使っただけでした。すみません、なにげなくしたかったので申し訳ないです。ロシアな雰囲気になったかな。ここは仮抑えができるし撮影にもとても協力的です。撮影しませんでしたが内部は和洋折衷のちょっと変わったアレンジもあり魅力的です。そういうのも日本の洋館の魅力のひとつですね。内部はいつか再チャレンジしてみたいです。
そのほかの洋館はというと、大河でまた一躍有名になった岩崎邸は現在撮影不可。赤坂プリンスホテル旧館は赤プリがなくなったのでこれまた今は撮影不可。そのほか色々聞いたんですが条件に合うものがなかなかありませんでした。
なら、横浜に洋館いっぱいあるじゃないの?って言われそうですが、横浜の山手の洋館の内部の撮影はかなりきびしいです。傘とかストロボがつかえない、つまり電気が使えない、家具が動かせない、スリッパはかなきゃいけない…etc
写真のようによさそうなとこもあったんですが残念です。