母方の叔父さんから親バカ通信なるメールが届きました。ニューヨークに行ってデザイナーをやってる長女の近況リポートです。もう10年くらい前だったか、文化女子を卒業して代官山でデザイナーのアシスタントをしていた時に何度か会いました。彼女はスゴくちっちゃい、そしてビンボー。ちっちゃいとビンボーは結びつかないようですが、そうでもないんです。20歳過ぎてたけど電車に子ども料金で乗ってました。ちっちゃいがビンボーを助けてたんです。一見、のん気で明るく見えますがタフでした。ひと月どのくらいでやってるの?と聞くと7くらいでと答える。7、ただの7?1人暮らしで? テレビやラジカセなんかも持ってない。そのちっちゃい体に貯えられたパワーは半端じゃなかったです。絶壁を楽しんでました。少しでも足しになるかと事務所で関わっていたお芝居(紀伊國屋劇場)のお手伝いを頼んだ事もありました。「消えもの」といって舞台上で役者さんが食べる海苔巻きを買ってから劇場に来るのも彼女の担当でした。「消えもの」覚えているかなぁ。それからしばらくして渡米。一度帰ってきた時、渋谷であったりしたけど、ホントにニューヨークは別世界。でも時間と生活、変化と成長は同じように世界中で進みます。
叔父さんからのメールは、親バカ通信というだけあって嬉しい内容でした。彼女がニューヨークで作ったジュエリーを日本で売っているというんです。United Arrowsにも置いてあるようです。でっかくなりました。さっそく青山のお店に見に行ってみました。こちとらあまりの普段着なので店に入ると浮いています。店員さんがさりげなく近くに。つかずはなれずついてきます。
オイ用心してるのか?「え〜ジュエリーが見たいんだけど…」 「プレゼントですか〜」とたん、やわらかい笑顔に。「これがオススメです?」ハートがいっぱい付いたジュエリーをすすめられる。
オッこれかな? つい親バカがうつって聞いてみた。
「これは売れてますか〜」「売れてますよ〜」しげしげ見てるので、脈ありととられ、置いてない商品を見せるためカタログを持ってくる。「作っているのは日本人なんですけどね」カタログの端に彼女の名前が見えた。間違いない。これか、こんなの作ってたんだ。「在庫はこれだけなんですか〜」「ほかにはないんですか」 「人気があって入荷するとすぐ売れちゃうんです」
「人気あるんですね〜そうですか〜」なんだかヤリトリがバカらしく思えて、下向いて笑ってしまった。
「どうしたんですか」店員さんが不思議がってる。
「すみません」「ハイ?」「すみません、いとこなんです。作品見に来ました」「携帯で写真撮っていいですか」「そういう事なら」すこし笑ってた。
「ホント人気あるんですよ」 「だましたみたいですみませんでした」
店を出るとお腹がすいていた。たった10年なのに彼女が海苔巻き買ってきてた頃が何十年も昔に思えてきた。