ビッグコミックの表紙を40年に渡って描かれていた日暮修一さんが先月亡くなられました。優しい笑顔が浮かび寂しいかぎりです。今は別の方が描かれていますが、どーも今ひとつピンとこない。ユーモアセンスが違うんですね。日暮さんとは5年くらい前に1度お仕事をしました。無名塾公演「ドン・キホーテ」の表紙。仲代さんを描いていただいたんです。その時の打ち合わせで、青山の自宅兼仕事場に何度かおじゃましました。オシャレです。玄関横のスポーツカー、部屋のインテリア、数々のJAZZCD。ご本人もすごくダンディ。センスの良さがあちらこちらに出てました。それとお芝居がすごくお好きな方。大阪、京都をまわって何本もお芝居を観る、はしご観劇の旅行なんかも行かれててビックリしました。自分がやってるテアトル・エコーもお好きで、よくご夫婦で観劇されてたようでした。片足がちょっと悪かったので、エコーなら席の融通がきくので連絡くださいと言ったんですが連絡はありませんでした。そういう事が嫌いだったのかな。そこもダンディですね。いつか熊倉さんを…とお願いしたら、ぜひ!と言っていただいてたのですが…かなわず…やりたかったです。
「ドン・キホーテ」はビックコミックほど頭が大きい極端なデフォルメをしないけど、ややコミカルに、少しデフォルメをしてくださいとお願いしました。いつもの3頭身を5頭身くらいのイメージです。こういうリアルなイラストの場合、先日のホブソンほどではないですが、出来上がりの近い状態や表情の写真を先に撮ります。それで撮影した後、写真を見ながらタイトル位置など打ち合わせして進めます。
描き上がった絵はB2サイズ、ストーリーが絵の中から訴えてくる素晴らしい出来です。
リアルな似顔絵じゃない絵というのはその時の事です。「こんなのも描いてみたんだよ」と出してくれたのがコレ。
風車を前にすくむドン・キホーテとサンチョ。唸りました。思わず、力作を前にして、これでポスター作りたいです。と言ってしまったほどです。そこにベン・シャーンにも通じる飛び抜けたセンスがありました。さっそく仲代さんにお見せしたらスゴく気に入ってもらい、これで何かやろうという話が持ち上がり、Tシャツを作ることになったんです。お芝居ものには珍しいセンスが良い誰もが普段も着たいTシャツ。お客さんはもちろん、スタッフやキャストにも大好評で、自分で何枚も買う人もいました。卓越した技術で描くビッグコミックの似顔絵と飛び抜けたセンスを持ち合わせた日暮さん、もっと一緒にお仕事したかったです。