「暮しの手帖」という雑誌があります。最近は昭和レトロの代表みたいな扱いですが、本来の魅力は、広告が全く入らないからこそできる、正当評価の商品テストにあります。この生活者本位の内容と、なんといっても花森安治さんのデザインや絵にあります。花森さんはあちらへ行かれてしまったのですが、その姿勢は変わっていません。
花森さんの絵が好きなので、カレンダーをネットで毎年買っていたんですが、3年前からやおらおこったレトロ人気のあおりを受け売り切れに…それでどこかで街の本屋で売っているところはないかと探したら西荻窪の信愛書房にたどり着きました。行ってみると、一見普通の地味な本屋さんに見えましたが、扱っている本にこだわりがヒシヒシと感じられ、独特の文化の香りが漂っています。これが古本屋ならわかりますが、新刊を扱う本屋さんだったのが新鮮でした。売れている本を揃えるだけではなく、読んでほしい本を置く。そこには確かな読書眼が裏打ちされています。そして信愛書房が古本を扱う高円寺書林というカフェをやっていることを知りました。
その高円寺書林が2月で閉店すると聞き、先日行ってきました。
とてもステキな空間でした。
扱っている本が面白く、共有する文化の匂いが自分と似通っていました。ささめやゆきさんの原画がかかっていて、川上澄夫の版画集などが並んでいます。ささめやゆきさんは今やっている加藤健一事務所の絵を書いているイラストレーターさんです。飾ってあるのはささめやさんにお願いするきっかけになった「猫のチャッピー」の原画。川上澄夫の方は世田谷美術館で個展を観て知り、面白いと思った作家です。う〜ん、これは縁だなっと懐を納得させ川上澄夫は連れて帰ることにしました。
「えげれすいろは」の1974年復刻版(限定500の内67番)
好きな文化の流れってあるなっと感じます。
暮しの手帖→花森安治→信愛書房→高円寺書林→川上澄夫
もっともっと辿り、引き返し、また別の道を辿る この繰り返しで好みの文化を探りだし掴むのでしょうか。音楽や飲み屋も同じですね。辿らねば…もっと徘徊して辿らねば。