いまでも覚えている夢の話です。
ワタシは一人で山の奥の奥に一軒だけポツンと建っているのロッジにいました。なぜそこにいたのかはわかりません。客は12~3人ほどで、服装からハイキングの人が多いようでした。時刻は夕方から夜になる頃、空が紫から漆黒に変わるいわゆる怪しげな逢魔ヶ時。そろそろ夕食なので、みんな一階のロビー兼居間兼食堂に集まって楽しそうに歓談していました。シチューを煮込んでいるいい香りがしてきます。
その時でした。
渓流釣りに来ていたオジサンが、ビックリした声を上げたのです。
「うわぁ熊だ!子熊がいるぞ!」
声につられてみんなも警戒もせず集まりました。
すると勝手口に、まだ生まれてそんなにたってないのでしょうか、40センチほどの小さな子熊が愛くるしい顔でキョトンと座ってました。晩ご飯の匂いにつられて迷いこんだようです。
「かわいいわね~」
「お腹がすいてるのかねぇ」
「ミルクがあったかな」
「俺が釣ったばかりの岩魚があるよ」
口々に言いながら我先にと子熊の世話をしだしました。
子熊のそばには必ず親熊がいるのを忘れていたのです。
そこへ夕食の準備を終えたロッジの人が出てきました。
「何してるんですか!」
「早く外に出して!危ない!親が近くにいますよ」
あっ、みんなが一斉に気づき子熊から離れました。この間、五分くらいだったのに、もう手遅れでした。
ものすごい地響きと同時にロッジは闇に包まれ、身震いがしました。
「ギャー」恐怖映画のような誰かの悲鳴。ハッとして振り向くと10m以上あろうかという、見たこともない巨大で真っ黒な母熊が窓いっぱいに迫ってます。顔だけで1mはゆうにあります。
「うわ~」「キャ~」逃げようにも入口を塞がれているので逃げられません。渓流オヤジが泣き出しています。そんな中でもワタシはなぜか冷静で逆に心が落ち着いていました。
「何か戦えるものはありますか?」
「アワワワワワ」ロッジの人も怯えるばっかりで答えになりません。そりゃそうでしょう相手は10mの巨大熊です。
部屋をグルッと見渡すと、片隅に巨大な三角定規が目に入りました。これまた1m以上あります。ワタクシは直角定規のとがった方を手にとると剣道の素振りをするように、ブンブンと振ってみました。
「カ、カドがあたると痛いよね」今泣いた渓流オヤジが、もうにやけ顔でにじりよって来ます。「痛そ~」みんなの声も聞こえます。
「バ、バ、バリバリ!ガッシャーン」母熊の頭がロッジの窓を突き破って入ってきました。
いまだ!ワタシは頭上高く定規を振り上げ、90度の尖った部分を思いっきり眉間めがけて…ビュン
ここで目が覚めました。
まぁなんといいましょうか、やや誇張しましたが、言いたいことは昔は我々デザイナーに三角定規は重要不可欠だったんです。こんな夢はいまは見ないでしょう。パソコンですから。
誰かに三角定規の角で殴られたことあったかなぁ~。
二等辺三角形のやつと二つ合わせてロットリングで線をひいたっけなぁ。
ワタシは手に汗かくのでとっても苦手でした。