市川きよあき事務所

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日記

横綱はハンとなれ

お相撲が子どもの時からすきなんです。以前は国技館にもちょくちょく行きました。
30年以上前のことですが、郷土の蒲郡に玉の海という早世した51代の横綱がいました。玉の海が小結の時、それまで一門同士しかあたらなかった取り組みが部屋別総当たりに変わった試合で、同じ一門の兄弟子の48代横綱大鵬を破りました。八百長や申し合わせがなかった証拠です。そしてこれが現在の部屋別総当たりを定着させたと言われています。奇しくも話題の二所ノ関一門です。それからはなかなか大鵬に勝てませんでしたが、玉の海にとって大鵬は、尊敬し慕い目標とする一門の先輩でした。玉の海が横綱になって全勝優勝を飾った7月場所後のことです。体調不良を訴え、調べると盲腸になっていることがわかりました。早急な手術が必要な状態だったのですが、横綱としての責任感と、9月場所後に大鵬の引退相撲が控えていて、休場すれば大鵬の引退相撲にも出場できなくなることから強行出場したのです。そして引退相撲のあと緊急入院、手術したのですが病状が悪化し、亡くなりました。横綱在位中のこと、まだ27才でした。
自分の病気を悪化させるまで我慢することはけっして良くないことですが、世話になった兄弟子大鵬の引退相撲に出席できないことは考えられなかったのでしょう。現在の医療技術なら助かっていたらしいので、そのことも含めて残念です。

65代横綱の貴乃花が理事になり、会見で温故知新という言葉を使っていました。彼には伝統や一門、兄弟、師弟、礼節などのいいところは残し、改革をしていってほしいです。大鵬さんに相談しているところがいいですね。全ての一門が政治の派閥なんかと混同されて、あってはいけないものだという方向にはいってほしくはないです。

68代の朝青龍は大鵬さんの言うことも聞かなかったようです。品格のことが取り出さされていますが、品格という言葉の解釈が彼には難しかったのかもしれません。一番強い横綱こそ謙虚であり、親方や先輩の言う事を素直に聞く、それが尊敬され愛される横綱になれるのではないでしょうか。
土俵上のガッツポーズも取りざたされました。これはどうなんでしょう。前にも書きましたが、東京オリンピックの柔道無差別級で日本を破り金メダルを取ったアントン・ヘーシンクは見事でした。(生で見ているわけではなく、TVの特番で見ました)勝負が決まった時、畳の上のヘーシンクに喜んでハグしようと駆け寄ったオランダの柔道関係者を、彼は右手を上げて来るなと制止したのです。その真剣な顔。喜びは顔にはありません。畳の上が神聖な場所であり、敗れたものへの礼儀こそが武道だからです。
69代の後輩横綱、白鵬の涙は真実でした。同郷の先輩横綱のことを偽りなく想っていました。彼は品格のある横綱に育っていくかもしれません。

ハンになれなかった朝青龍。ハンはモンゴルの英雄チンギスハンのことではなく範のことです。横綱は若い力士の模範、手本とならなければいけません。大相撲何百年の中でたった69人しかいない横綱、大鵬さんからでも20人しか出ていません。次の横綱はいつ出るのか、強くて模範となる人を望みます。