市川きよあき事務所

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日記

かしぶちさんとお弁当

自由が丘に事務所が移ってから、お昼といえば自由が丘デパートにある「味よし」のお弁当。ここはいわば自由が丘の台所。50種類ものお惣菜あり、お弁当が美味しいのなんのって。しかも500円、お値打ちですわ。週に二、三回は通っています。いつも、その日の魚のお弁当に好きなオカズをちょい足し。「レバー2つ入れて」とか「それにザーサイ30g」とか。
先代のおばちゃんと、もうひとりおばちゃん、現ご主人。それに若い衆が一人。(一人で衆はへんですが…)この若い衆は黙々と仕事をこなすタイプでして、あまりお客と交流するのが得意じゃない感じ。おばちゃん達とは毎回何かしら話すんですが彼とは話をした事がなかったんです。
それが夏のある日の事、いつものように弁当を頼んだところ、彼が「いいTシャツですね」とニコっとしながら話かけてきました。突然、無防備のところを踏み込まれたのでちょっと驚きました。その日はムーンライダーズライブで買った青いTシャツを着てたんです。
「あっムーンライダーズ好きなの、めずらしいね若いのに」
「最期のサンプラザ行ったんですよ」
「へえ…いたよオレも。ムーンライダーズは15年くらい行ってるんだよ」
「僕は初めてだったんですがよかったです」
思いもかけない交流に店のおばちゃん達もニコニコしてました。

ムーンライダーズは1975年、今から38年前に結成され、現在のメンバーになったのが1977年。鈴木慶一、弟の鈴木博文、岡田徹、武川雅寛、白井良明、かしぶち哲郎の6人。全員がソングライティングする希有なバンドです。それぞれの個性が違うから作る曲も様々。ヒットがないから世間的には無名ですが、ステキな曲ばかりの息の長いバンドです。
メンバーが60代になっているので、ファンも40〜60代。それもファン歴20年以上の猛者ばかり。オレなんかまだまだ序の口、ミーハーレベル。ライブに来ている人は業界人というか自由人というか、お洒落っぽいクセモノが多い感じ。アウトドアというよりインドア。ライブはほとんど座りっぱなし。促されて3曲くらい立つかなって感じ。かなり軟弱です。

2年前のサンプラザでの無期限休止宣言があった35周年記念ライブもいつも通りでした。切迫感もサヨナラ感もなく、鈴木慶一さんの「また会いましょう」の言葉もあったし、最期というイメージは全くなかった。それぞれの活動の後サラッと40周年はやるんだろうと軽く考えてました。
6人が欠けることなんて考えてなかったんです。確かに何年も前から、かしぶちさんは休んだり助っ人が入ってダブルドラムになったりしてはいましたが、最期のコンサートは元気そうに見えたんです。
最近のムーンライダーズの中の好きな曲に「6つの来し方行く末」という曲があります。6人が自分の誕生月の詞を書いて歌いつないでいきます。かしぶちさんは2番目の11月でした。

十一月には コートはおって
悲しみの住処暖めるよ
白い崖の 上に立ち 風を吸い込んで
これまでの道を 吹き飛ばせればと

6つの来し方行く末