市川きよあき事務所

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映画

大島渚監督といえばATG

ゴダールやトリフォーを中心としたフランスの映画界でおこった革命のヌーベルバーグは有名ですが、日本でも松竹の助監督達が1960年代に松竹ヌーベルバーグと呼ばれるインディペンデントな映画運動をおこしました。その代表的な監督が大島渚、吉田喜重、篠田正浩です。彼らはその後松竹を離れ、活動場所をATG(日本アート・シアター・ギルド)に移します。ATGは作品選定委員会があり、ルールを決めて映画を作り配給していました。予算が一千万という低額だけど作品は完全に自由。彼らをふくめATGの作品は実験的でエネルギーに溢れていてかなり刺激的でした。大学生の頃に千石にあった三百人劇場や池袋の文芸座なんかでATG映画特集をやっていてよく観に行きました。余談ですが三人の監督に共通するのは三人共日本を代表する女優を奥さんにしていて、ほとんどの作品を奥さんを主役にして撮っていることです。若い頃は予算がなかったためだと思いますが、興味深いですね。だんだんほかの女優さんに声かけづらくなっちゃう事もあるんだろうか…
大島監督が亡くなられても「戦場のメリークリスマス」や「愛のコリーダ」とかの映画しか話題に上がりませんが、実はこのATG映画でものすごく面白い映画を数多く発表しています。代表的な作品は「絞死刑」や「儀式」。戦メリしか知らない人にぜひ観てほしいですね。そして私の大島渚ベスト1は「少年」。映画の内容を書くのが好きじゃないのでやめますが、だまされたと思って観てください。やられます。泣けますよ。「絞死刑」より観やすいです。

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だまされついでに観てほしいのが、これもATG映画の篠田正浩監督の「心中天網島」。これもすごいです。岩下志麻さんが主役(二役)なんですが極妻しかしらない人はビックリしますよ。キネマ旬報の上位作品にATG映画がずらっと並んだ時代です。その頃に比べて今の映画は常識が支配しすぎていて映画の可能性を狭くしているように思います。
1967年に始まったATG映画は1986年で終わります。「転校生」「家族ゲーム」「お葬式」なんかがATG映画が関わった最後の方の作品ですが、やはり1960年代や1970年代の作品を観てほしいです。ATG映画が亡くなってしばらくした後、路上古本市で見つけたのがこれ。
余ってたようで何冊も平積みで売られてました。通りすがりで興味持ったのはオレだけだったようでしたが、こちとら大発見で嬉しかったなぁ。

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題字(ロゴ)は伊丹十三監督。ATGの映画パンフには、このアートシアターロゴがでっかく付いていて、古本屋の映画コーナーなんかでロゴ見つけるとうれしくなります。ATGの歴史がつまったこの一冊はデータが満載で自慢できる宝物になりました。そして本をペラペラめくっているうちにATG映画を誰かに観てもらいたい欲求が強くなりました。大きいTSUTAYAにあるのかな?う〜んビデオではあったようだけど、大島監督のDVDはどうもBOXのような売り物しかないのかも。大島監督達の若い頃の凄さをなんとかわかってほしいです。篠田監督の「心中天網島」は借りられるようなのでそれだけでもどうぞ。