市川きよあき事務所

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映画

お芝居で映画館と生ゴジ

燐光群のお芝居「ここには映画館があった」を観てきました。
映画が斜陽になりつつあり、映画館がだんだん無くなっていく時代をとりあげた作品。自分の映画体験そのものでした。観た回は長谷川和彦監督とのアフタートーク付き。撮った作品は2本だけ。それから30年以上も撮っていないゴジと呼ばれる長谷川監督は、半端なく凄く、面白かった。

子どもの頃から映画が好きだったんです。映画マニアのおじさんがいて兄貴と二人、影響受けました。小学校〜大学までは映画一色。育った港町には映画館が3つあり、毎週のように通ってました。ぴあみたいな情報誌はもちろんなく、前もってスケジュールを確認する習慣がなかったので、ほとんど行き当たりばったり。途中から入って1周半観ちゃう迷惑な子どもでした。よく行くんで終わった映画のスチールをもらったことも。そのうち兄貴と競争するようにサントラ盤や映画雑誌を買うようになりました。雑誌はスクリーンとロードショーが出てたけど、後発のロードショー派。よく表紙を飾るジャクリーン・ビセットが好きでパネル張りまでしちゃってた。
それからいっちょまえに通ぶってきてキネマ旬報へ。ロードショーは洋画情報ばっかりだけどキネマ旬報には邦画情報もどっさり。そこで気になるのがキネマ旬報ベスト10。かろうじて洋画は地元近辺で網羅できるけど、自称映画通としては邦画のベスト10も観ないわけにはいかない。いかないけど、観たくてもアングラなATG映画なんて地方ではやってない。
観たい欲求が溜まりに溜まった状態で大学で東京に出てきたもんだから、その辺り観まくりました。

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その中の1本が1976年度キネマ旬報1位ATG映画の「青春の殺人者」。長谷川和彦監督の衝撃のデビュー作です。ギッラギラです。水谷豊もギッラギラ。「傷だらけの天使」でショーケンの後を追っかけ「男たちの旅路」で鶴田浩二に説教されてた我らが水谷豊。チンピラで反抗の象徴でした。
先日、仲代さんとパンフレットの打ち合わせの時でした。仲代さんが突然、昨日「青春の殺人者」観たけどすごく面白かったよ。とおっしゃいました。BSで観られたのかDVDで観られたのかわからないですが…それで
「あいつ何やってる?」って聞かれるので
「長谷川和彦監督ですか、長く撮ってないです」
「何って言ったかな」「ゴジですか」「そうゴジ、ゴジ」
それから映画の話を少ししました。
偶然なのか必然なのか。製作の規模じゃなく内容で映画に出演する仲代さん。満を、満を持して作りだす長谷川監督の映画にもし仲代さんが出たら凄いだろうなと夢みました。

まだあきらめてはいない、そう言って会場を去る監督の姿はまぎれもなく現役でした。