市川きよあき事務所

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映画

一日に観た映画、最高何本?

続いて映画の話。これは前にも書いたのですが、高校生になってキネマ旬報を買うようになり、当時連載されていた和田誠の「お楽しみはこれからだ」にすごく影響受けました。映画の名セリフシーンを1ページずつ、あの似顔絵イラストと巧みな文で解説しています。ビデオもDVDもない時代だったんで「お楽しみはこれからだ」に登場する映画がいつか観たい映画リストになっていました。中でも和田さんが好きなビリー・ワイルダーが気になる気になる。代表作の「昼下がりの情事」と「麗しのサブリナ」を名古屋の名画座かなんかで観たらますます他の作品が気になる気になる。特に和田さんオススメの「アパートの鍵貸します」が観たくってたまらない。

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高校1年の夏休みのことです。キネマ旬報の巻末に東京の映画館情報が載っているんです。これがいけない。田舎の映画館がたった2軒なのに東京には100以上もあることが、東京に行けばいつでも観たい映画が観られることがわかっちゃう。腹ぺこなとこへ高級食堂のウインドーが現れるようなものです。それでなんとな〜く見てると、文芸座のオールナイト5本立て「ビリー・ワイルダー特集」の文字が飛び込んできました。「アパートの鍵貸します」も入ってるじゃありませんか。なんてステキなトコロなんだろう東京…。その週がチャンス。ですが、遠い。在来線と新幹線で5時間はかかる…遠い。え〜い、もう矢も楯もたまらず、どうしても観たくなってしまい、どうやって親に話したのか忘れましたが、一路東京に。
ちょうど東京にいた映画マニアのおじさんが東京駅まで迎えに来てくれて、文芸座のある池袋へ向かいました。直行です、池袋には昼過ぎに着きました。オールナイトは夜10時からなんで、まだ十二分に時間はあります。
当時池袋の東口を出てパルコの先の左方向には、映画館がズラーっと並んでいて、一番奥まったちょっと中に入ったとこに目的の文芸座がありました。
とりあえずご飯を食べながら…
オジサン「どうする?映画観るならつきあうよ?」
映画の前に映画。カツ丼の前の親子丼。映画マニアと映画少年なら普通にあり。
とりあえずオジサンと二人で一番近くでやってたジーン・ハックマンの「フレンチコネクション1+2」の2本立てを観る。
やっぱり1の方が面白かった。
で、夕方にはなったけどまだ時間はたっぷり
オジサン「どうする?オレんとこ上石神井だけど、寄ってからまた池袋戻ったらいそがしいし、どうする?」
オレ「いいよ。この辺におるわ。どこいったらいいかわからんから映画でも観るわ」
映画の前の映画の後に映画。カツ丼の前の親子丼の後に玉丼。ありではない。だけど田舎もんはしょうがない。オジサンは映画館にいるのならとなぜか安心し、サヨナラ〜。それで、さっきよりもうちょっと文芸座に近寄った地下の小さな映画館で、ドリフターズの古い2本立てを観劇。正直あんまり面白くはなかったけどオールナイトまでの時間をうまくつぶせたので良し。
いよいよオールナイト。はじめてのオールナイトを観る自分にちょっと酔っております。ビリー・ワイルダー5本立ては「昼下がりの情事」から始まって「ねぇ、キスしてよ」「あなただけ今晩は」「恋人よ帰れ、我が胸に」と続き最後が「アパートの鍵貸します」。
最初が少し眠かったのですが大好きな映画だったのでなんとかのりきり、結局観終わってみれば最後の「アパートの鍵貸します」が一番面白かった。
で、満足感、観た感たっぷりで、そのまま山手線のって東京駅から帰路。
どこへも寄らず、泊もせず。1日9本。
いまは2本でも無理です。何しろ映画に飢えてたし、若かったわ〜。