11年前のある日、1枚のFAXが流れてきました。OKだという内容のFAX。送信票として使っているのかもしれませんが、このFAXは捨てられません。(内容は消しました)
妹尾河童さんとはその時に一度だけ無名塾の「森は生きている」でご一緒しました。ご一緒したといってもパンフレットに載せるための原稿をもらっただけなんです。それでも、緊張しました。河童さんは舞台美術家であると同時に優れたグラフィックデザイナーでもあるからです。原稿に文字組の指示がしてあり同業者感覚を感じて嬉しかったです。イラストなんですが少年Hはともかく軍服の少年も河童さんご本人でしょう。Hとは河童さんの本名肇(はじめ)のH、本を読んでいたのでご本人のHにいたく感動しました。
それから最近、長らく気になっていた映画の「少年H」を観ました。本が良かったので観るのをためらってた所もありますし、戦争ものを遠慮していた所もありました。映画は、もうちょっと本で感じたグゥ〜と盛り上がる頂点みたいな感じが欲しかったんですが、画もキレイで臨場感もたっぷりでとても良かったです。特に父親役の水谷さんがいい。水谷さんってパターンで芝居する俳優さんのイメージがあったんです。若い頃は「傷だらけの天使」や「男たちの旅路」のヤンチャで「…ナ〜ニヤッテンノ〜」って首ふりながら語尾を伸ばすイメージ、右京さんの「…ですねぇ…ジョロロロロ〜」と妙に落ち着き払ってひとり遠くにいっちゃってるイメージ。つまり型にはめて演技するイメージだったんですが、妹尾家の父親はとても自然で気持ちがわかって懐が深い。スゴく良かったです。右京さんばっかりやらないで普通の役ももっともっと観たいですね。
河童さんは80歳をこえ、いまは老年Hですが、まだまだ現役で頑張っておられるようです。何か機会があればまたご一緒したいです。